よく切れて切れ味の落ちないパン切り包丁を探す

ORANGEHOUSEのパン切り包丁

わが家は適当なパン切り包丁を使っています。奥さんいわく何年も前に雑誌の付録でもらったもので、柄の所に「ORANGE HOUSE」と書いてあります。オレンジページ…ではないんですね、どこのなんだこれは。握る所はプラスチックでできていて、刃はステンレスらしいです。パン切り包丁の研ぎ方も知らないので、もう何年も手入れせず使っています。

朝食はパンを食べることが多い我が家、普段は6枚か8枚切りを買っています。焼き立てパンを買うと切ってもらえない事があるので、そんな時は家で冷ましてからこの包丁で6枚くらいにおろします。パンくずがそれなりに出ますが、まぁこんなものなのかなと我慢していました。

悲しいほどにハード系のパンが切れない

スーパーでたまに買ってくる神戸屋のフランスパンはまだいけます。問題はパン屋さんで買ってきたパンで、ハード系を売りにしているお店で買うと全然切れません。刃がパンの表皮を滑ってしまい、力を入れると周りの生地を巻き込みながらバリバリ砕け散ります。一応切れてますが、パンくずも多いしパンも少し潰れるし、毎回悲しい気持ちになっていました。

自宅でパンを焼いているママ友さんが銘入りっぽい名前の包丁を使っていると聞き、パン切り包丁に少し興味が出てきました。どんな種類、どんな価格帯のものがあり、自分みたいなゆるふわなパン切りマンが手にするにはどういったものが良いのか。そんなあたりを調べてみました。調査対象はいつも愛用しているAmazonです。

パン切り包丁の種類あれこれ

価格帯(実売価格)

  • 1,000円くらい
  • 3,000円くらい
  • 5,000円以上

価格帯はだいたいこの辺りのようです。2,000円から刃の素材がよくなり、5,000円を超えるとブランド価値が上乗せされる感じです。狙うなら真ん中の2〜3,000円のものでしょうか。

刃の形状

パンは表皮が硬く中が柔らかいので、肉や野菜のように力押しで切ると潰れてしまいます。のこぎりのように何度も押し引きして切る必要があり、そのため波状や鋸状の刃をしています。

波刃

GLOBALの波刃
刃先が荒れた海みたいなウェーブ状で尖っている。硬いパン向け。Amazonに並ぶ物はほとんどが波刃でした。

鋸刃

鋸刃
刃先は尖っていないタイプで、柔らかいパン向け。
うちのパン切り包丁は「鋸刃」だったらしく、もともと硬いものには向かなかったようです。トホホ。

刃の素材

  • ステンレス
  • ステンレスにモリブデン、バナジウムを添加した強化版

だいたいこの2種類になります。純粋な鋼(ハガネ)の包丁はメンテナンスが大変なため本職向けのようで、一般に流通する包丁(パン切り包丁含む)はステンレス系が多いみたいですね。

ステンレスは錆びなくて便利ですが、ハガネに比べると柔らかいのが欠点です。それを補うためにモリブデンやバナジウムを添加した強化ステンレス鋼の物もあります。

ステンレススチールの刻印

1,000円未満の安いものはステンレス、それ以外はだいたい強化ステンレスです。
うちのは雑誌の付録だから…やっぱりただのステンレスでした!

メーカーによって呼び方に違いがあり、「特殊ステンレス鋼」「モリブデン鋼」「モリブデンバナジウムステンレス刃物鋼」「超硬質ステンレス鋼」といった表記ゆれがあります。

最後の「超硬質〜」はグローバル(後述する包丁メーカー)のもので、同じ素材でも言い方ですごく差があるように見えますね。ブランディングの巧拙でしょうか。どの表記でも、普通のステンレスより硬くて切れ味が落ちにくいよと思っておけば良さそうです(素材の含有量で硬さ、粘り強さの違いなどはあると思います)。

柄、持ち手、ハンドルの素材

パン切り包丁の持ち手の種類

昔は包丁の柄と言えば木が主流でしたが、最近は価格を抑えるためにプラスチック製もあります。逆に刀身と柄をステンレスで統一したものもあります。

柄が木の場合、水が侵入すると腐ってしまい刃がスッポ抜けることがあります。予防として蝋を塗ったり、最近では樹脂などで防水処理をすることもあります(柄埋めといいます)。

プラスチック製や刀身一体型ではそういった心配はありません。というかもともとパン切り包丁は水で濡れることが少ないのでこの心配は要らないかも…?

また、一体型の特徴として食洗機で洗える物もあります。食パンを切ったくらいでと思いましたが、具だくさんなサンドイッチを切った時は便利かもしれません。

あと全身が銀色だと妙に高級感があります。銀の刃×黒い柄に目が慣れているので、銀一色だと特別な感じがしますね。

電動型

BLACK+DECKER 電動ブレッド&マルチナイフ EK700
BLACK+DECKER 電動ブレッド&マルチナイフ EK700(3,000円/104件のレビュー)

驚いたことに電動タイプもあります。見た目は完全に電ノコ。切れ味は優秀ですが、デカい、音がうるさい(ブレンダーくらいの音は出る)、コードの取り回しが面倒、などの欠点もあるそうです。そこまで料理好きではないので今回は選択肢から外しました。

パン切り包丁を出しているメーカー

Amazonに置いてあるものだけを見ているので、オシャレ雑貨店にあるようなブランドは出てこないです(ギューデは出なかったけどライヨールはあった)。どんなものがあるんでしょうか。

貝印

男性からすると爪切りやカミソリで馴染みのメーカー。お菓子作りの道具や化粧関連用品など、刃物以外の金属加工品も多く取り扱っています。包丁ブランドの「関孫六(せきのまごろく)」と、パン関連に特化した「ブレッディ」があり、ブレッディは1,000円、関孫六は2,000円くらいで買えます。

関孫六は大変歴史のある名前で、室町時代までさかのぼるそうです。ドイツのゾーリンゲンと同じくらいの知名度を誇るため、ムラマサとかマサムネ的な感じらしいです。すごい!すごい名前なのに2,000円!

貝印のブレッディ
ブレッディ(1,064円 / 360件のレビュー)

貝印の関孫六
関孫六(1,897円 / 167件のレビュー)

下村工業

新潟にある刃物メーカー。140年以上前から続く三条刃物鍛冶が由来。Amazonには「ヴェルダン」というブランドでオールステンレスのパン切り包丁が出ていますが、UN-RYU(雲流?)ブランドでダマスカス鋼のような物も出しています。ヴェルダンは1,000円くらいで買えるがUN-RYUは18,000円と桁違い。鍛冶屋の本気を感じます。

得意の刃物を使ったアイデア商品も出しており、りんごの皮むき器もあります。

下村工業のヴェルダン
ヴェルダン(1,154円 / 314件のレビュー)

佐藤金属興行

1976年創業の新潟県燕市の中小企業。金属洋食器や雑貨などの製造販売を行っている。Amazonで買えるパン切り包丁では一番安い。安すぎる価格にレビュワーも困惑しているようです。値段なりかもしれませんが。

佐藤金属興行のSALUSキュイジーヌ
SALUSキュイジーヌ(441円/5件のレビュー)

VICTORINOX (ビクトリノックス)

スイスアーミーナイフやマルチツールで有名な企業。社名の由来が 創業者の母の名前「ビクトリア」とステンレスのフランス語「イノックス」を合わせたもの らしくて、ちょっとこれ素敵やん…?

ビクトリノックスのスイスツールは男性的にすごく魅力的で、何に使うかわからないけどとりあえずひとつ買っておきたいと多分みんな思っている。

実は創業当時からキッチン用の包丁も作っていて、そこから派生としてワインオープナーなどの小物も作るようになったらしい。

同じくスイス生まれ、ブレッドナイフで人気のウェンガーはここに買収されましたが、ブランドは継続しています。

VICTORINOX ブレッドナイフ スイスクラシック
スイスクラシック(3,882円/8件のレビュー)

波刃のペティナイフというスキマ商品もあります。価格も1,000円弱と安めで、パン以外では野菜や果物などにも使えるそうです。カラーも多く、レビューを見ていると愛用者が多い雰囲気。

柳宗理

本名は「柳宗理(やなぎ むねみち)」。椅子やヤカンが有名でオシャレ雑貨店によく置いてある。うちもヤカン、包丁、スプーン類などを揃えてみたが、その内のスプーンの形が微妙であまり使っていない。バターナイフは使いやすい。全体的に見た目はかわいい。そしてちょっと高い。

柳 宗理 ブレッドナイフ 21cm
ブレッドナイフ21cm(5,505円/40件のレビュー)

GLOBAL (グローバル)

グローバルという名前だが日本の会社。作っているのは吉田金属工業株式会社という所で通称YOSHIKIN(ヨシキン)。なんとここも新潟県燕市の会社。1954年に洋食器メーカーとして創業して、60年にはステンレス包丁を作っていたようです。GLOBALシリーズは30年以上も世界中で愛されています。

六本木にショールームのような直営店があります。あとホームページがかっこいい。包丁もかっこいい。

GLOBAL パン切り 刃渡り 22cm
パン切り 刃渡り 22cm(8,640円/21件のレビュー)

L’ECONOME (レコノム)

1918年にフランスで生まれたナイフメーカー。3本傘がトレードマークで、フランス製だからか木製の柄の色使いがかわいい。かわいくて小さいのでオシャレ雑貨店によく置いてある。コンランショップでも買える。

柄の色はナチュラル、ブルー、グリーン、ブラウン、ベージュ、レッド、イエローなど多岐にわたる。

L'econome (レコノム) ブレッドナイフ
ブレッドナイフ(3,651円/レビューなし)

HENCKELS (ヘンケルス)

ドイツにあるツヴィリング J.A. ヘンケルス株式会社のブランド。本社はドイツのゾーリンゲン。刃物といえば岐阜の関市かドイツのゾーリンゲンというくらい有名なゾーリンゲン。1731年創業と歴史が古く、刃物以外にも食器や台所用品も扱っている。

ツヴィリングとヘンケルスは同社の別ブランドで、ヘンケルスの方がお安め。また、ヘンケルスブランドでは各国にローカライズした商材を展開している。

公式サイトの写真がきれいで素敵。でもドイツ語なので読めない。末尾のAGはドイツ語で株式会社の意なんだそうです。
ZWILLING J.A. Henckels AG | Marke für hochwertige Messer, Kochgeschirr, Beauty

Henckels ベルリン パンナイフ
ベルリン パンナイフ(2,383円/6件のレビュー)

Laguiole (ライヨール / ラギオール)

ソムリエナイフが有名なフランスのメーカー。スペルは Laguiole で読み方はラギオールともライヨールとも。ライヨールとはフランスにある村の名前で、刃物生産が有名な地域。ブレッドナイフも優雅な造りが素敵。

ラギオールナイフについての諸説は下記が詳しい。要約すると「夕張メロンだけど夕張が数か所ある」みたいな状態になっているみたいです。

Laguiole ブレッドナイフ
ブレッドナイフ(3,651円/1件のレビュー)

藤寅工業(ふじとらこうぎょう)

1953年創業の新潟…、またしても…新潟県燕市の企業ッ!なんだこの新潟勢の強さッ!下手なこと言うとなます切りにされそうです。

元は農機具部品+農業用刃物(鎌とか?)で起業しましたが、2年後には包丁を始めたそうです。包丁ブランドの「藤次郎」が有名なため、公式サイトも tojiro.net になっています。ちなみに fujitora.com を叩くとロシアの医療機器メーカーのサイトが出てきました。ロゴ見て爆笑です。最初ギャグかと思った。

fujitora
???「「世界政府」ってのァ 神かなんかですか」

藤寅工業サイトにある豆知識がかなりマニアックで読み応えがあります。

マニアックといえば日本橋の歴史ある包丁屋、木屋の会長の話もかなりボリューミーであります。

この謎を解くため、宇宙そして誕生間もない頃の地球に思いを馳せてみましょう。
刃物考 > 会長の話3 鋼はなぜ錆びるのか – 日本橋 木屋

藤寅工業の藤次郎 パンスライサー
藤次郎 パンスライサー(1,729円/7件のレビュー)

パン切り包丁の切れ味の落ちっぷり

Amazonのレビューを見ていると、安いものでは「切れるけどこんなものかな」という感想があり、高いものだと「すごく切れます!!!」という感想が目立ちました。結構金額によるバイアスがあるような気がしますが、特に気になったのは高いものの中にあった「初めはよかったがすぐ切れ味が落ちた」という物です。超硬質素材でも切れ味が落ちるときは落ちるみたいですね。

安いものは買い直せば済みますが、5,000円以上するブランド物だとそうは行きません。そうなってくると気になるのはメンテの仕方です。

パン切り包丁は研げるのか?

普通の包丁は砥石やシャープナーで研げますが、パン切り包丁、ブレッドナイフとして売っているギザギザ歯の包丁は「基本的には」研げないとされています。パン切り包丁自体が安いので、パン屋などでは切れ味が落ちたら交換というような使い捨て作戦のところもあるようです。

どうしても研ぎたい場合は、普通のシャープナー(包丁を差し込んで引っ張るやつ)よりも棒ヤスリのような物を使うと良いそうです。パン切り包丁用を謳っているものもあります。

LANSKY(ランスキー) パン切りナイフ用 シャープナーLANSKY パン切りナイフ用 シャープナー(2,643円/15件のレビュー)

藤寅工業の豆知識にも詳しく書いてありました。

波刃形状や特殊な包丁の場合

波刃やノコ刃など特殊な刃が付いている物は角砥石でそのまま研ぎ直しはできません。波刃などはスティック状の丸棒砥石などで波刃一つ一つを研いでいく必要があります。
また、ノコ刃の場合は角棒砥石やヤスリなどでノコ刃の面を削る必要があります。製造メーカーでも波刃やノコ刃の研ぎ直しを行っていることは少なく、消耗品として考えた方が良いと言えます。
:::砥石の選び方 – TOJIRO:Net:::

パン教室のGoûter Dominiqueという所が、なぜかパン切り包丁の研ぎ方を公開していました。多分教室用の教材なんだと思いますが、簡潔にまとまっているのでありがたくリンク貼っておきます。
https://drive.google.com/file/d/0B7gLUzuEfLvAcXFmQWhnOUc2a0k/view

また、包丁研ぎを専門に行なっているお店に持ち込むと面倒を見てくれることもあります。上の棒ヤスリでゴリゴリやってくれるんでしょうか。研ぎ代は2,000円程度だそうです。

ということで自分が買うと良さそうな物は…

  • 銀一色の見た目が良ければ下村工業のヴェルダン
  • 普通の見た目で良ければ藤寅工業の藤次郎
  • サブとしてVICTORINOXのベジタブルナイフ

と、こんな感じでしょうか。どれも2,000円しないですね。
藤次郎はウェブサイトの濃さにやられました。素材は普通のステンレスでもいいです研ぎます。

ちなみに藤次郎は「藤次郎 パン切り包丁」で検索すると、DPコバルト合金鋼タイプ、モリブデンバナジウム鋼タイプ、オールステンレスタイプなどの上位モデルも出てきます。価格帯も5,000円〜に上がりますが、自分にはまだ早いかなと思って保留にしました。下位モデルが気に入ったらステップアップしようかな。


ここまで調べた後に出てきた悲しいお知らせ

なんとプロは牛刀で切っているそうでして、ギザギザの刃は研げない/研ぎにくいので、メンテしやすい普通の包丁を使うそうです。切り方はパン切り包丁と同じで前後にギコギコしながらやっています。

切り口の毛羽立ちもなくなるので、パンによっては口当たりが変わるそうです。そ、そんなぁ〜〜(藤次郎プロ ニッケルダマスカス鋼牛刀 定価3万円を開きながら)。

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