お香は香料を練って棒状にしたものしか知らなかったんですが、コジャレた雑貨屋には紙のお香もあります。
パピエダルメニイという名刺サイズのお香です。表紙をめくると3枚つづりになっているので、1枚ずつ切り離して使います。ジャバラ状に折って、耐熱皿(お香立てとか灰皿とか)に載せて直接火をつけて燃やします。ちょっとおばあちゃんの家っぽい、どことなくホコリっぽくて懐かしい、ややバニラのような香りがします。
ずっと「パピエル=ダニエル」だと思っていた
\パピエルでーす/
\ダニエルでーす/
製品名が「Papier d’Arménie」でまったく読めないので、お店では必ずカタカナで書いてあります。ちゃんと読んでなかったので人名かどこかの芸人みたいな呼び方で頭に入ってしまってました。パピエル=ダニエール(46歳:医師)とか書かれたら「そうね」って思ってしまいそうです。
お店の方、パピエ=ダルメニーって書いてもらえますでしょうか!?(怒)
呼び方に自信がなく「ペラペラの紙の消臭剤にもなるお香」と呼んでいたので最悪の事態はまぬがれました。
スペルをよーく見てみると、パピエ…パピルス…古代の紙…? d'
のあとに大文字で Arménie
と続いている…これは of
とか is
っぽい…?正確には補語…? Arménie
は素直にググったらアルメニア共和国って出てきて、République d’Arménie って書いてある…ので、これって「アルメニアの紙」ってことなのか。フランスから見てエキゾチックな東の国から伝わる良い香りのする紙、パピエ=ダ=アルメニー。
d'
の部分は「クーデター」とか「レゾンデートル」の「デ」と同じみたいでした。
Google翻訳にかけたら発音も聞けました。
Papier d’Arménie – Google 翻訳
Google翻訳の音声が面白かったので他の単語も読ませてみました。PCでもスマホでも聞けます。それっぽい!
他の単語 – Google 翻訳
古くから「消臭剤」「空気の浄化」「殺菌」効果があるとされている
お店のポップとかには1855年にフランスで作られて、「消臭剤」「空気の浄化」「殺菌」の効果があるとされて、病院でも使われた
とか書いてあります。Amazonの説明書きにも「空気中にバクテリアや伝染病のウイルスがあるようなところでの使用もお勧めします。*風邪の感染予防にも効果があります。」とあります。うそくせー…なーんかうそくせー…。
しかし香りはいいのよ。
ベンゾイン樹脂 ― 香料として安息香が使われている
Amazonやお店にある説明書きにはこうあります。
パピエダルメニイは安息香の木から採取したベンゾイン樹脂を含んでおり、この成分が空気を浄化します。
安息香の木(アンソクコウノキ)というそのまんまの名前の木から取れる樹脂が入っているそうです。ゴムの木の樹液からゴムが作られるくらいなので、あんな感じで採取するんでしょうね。木の写真などはこちらに丁寧にまとめられていました。
Styrax benzoides / アンソクコウノキ :タイの植物チェンマイより
ずいぶん古い時代から香料として使われていたようで、Wikipediaを見ると中国の明の時代に記された『本草綱目』には諸邪を安息する効能があることから名づけられたとの記載がある
とか出てきます。安息香 – Wikipedia
安息香の主要成分が安息香酸と、またもやそのまんまな成分でした。こちらを見ると抗菌・静菌作用があるが殺菌作用はない(細菌などの増殖したものに対しては無効)とあったので、空気は一応キレイにするけど期待しないでね、という感じでした。安息香酸 – Wikipedia
安息香にはバニリンという物質が入っているので、バニラの香りがするそうです。ほうほうなるほど。
バニリン ― バニラ香料は化学の香り
天然としてはバニラ(バニラビーンズ)、安息香、クローブの製油などに入っているそうですが、化学合成でも作れるそうです。しかも4パターンもある!
最初の合成は、1874年にヴィルヘルム・ハーマン、フェルディナント・ティーマン、カール・ライマーらによりコニフェリンを原料に行なわれた[3]。 これによりバニリンの工業的な生産が可能となり、彼らによってそのための香料会社ハーマンアンドライマー社(現シムライズ社)がドイツのホルツミンデンに設立された。
バニリン – Wikipedia
これまたずい分前からあったんですね。クスリっぽい風味のバニラアイスはこの辺の安物が使われてたんでしょうか。
同ページに衝撃的なことが書いてありました。
バニラ香料の需要はバニラ・ビーンズの生産を上回り続けており、2001年には全世界で1年間に12,000トンのバニリンが消費されたが、このうち天然のバニリンは1,800トンのみ、残りは化学合成である[4]。
バニラいい匂いですもんねぇ。バニラアイスに入っているバニラビーンズも、実は半分くらい偽物で香料盛ってるのかもしれませんね。バニラビーンズ入り(黒いつぶつぶが入っているが100%だとは言っていない)みたいな。
ハーゲンダッツのバニラを見ても「バニラ香料」となってますね。どこ由来の香料なのかはわかんないですね。美味しければいいんですけどね。
ミニカップ|商品情報|ハーゲンダッツ Häagen-Dazs
香水なんかはほぼ化学合成な気がしますね。
バニリン ― 牛糞からバニリンを抽出することに成功してイグノーベル賞
Wikipediaのバニリンのページの下の方にもう1個衝撃的なことが書いてありました。
国立国際医療センター研究所に所属する山本麻由は、牛糞からバニリンを抽出することに成功し、2007年、第17回イグノーベル化学賞を受賞した。ケンブリッジ市最高のアイスクリーム店トスカニーニズ(Toscanini’s Ice Cream)が彼女の成果を称えて”Yum-a-Moto Vanilla Twist”という新しいバニラアイスクリームを製作し、授賞式で振る舞われた[5]。なお、このアイスクリーム中のバニリンは牛糞由来ではない。
バニリン その他 – Wikipedia
化学最高ですね。食べた飼料(に含まれるバニリン…を含むリグニン)が分解されて別の形になってウンコで出てきても、そこからまた分解してバニリンを取り出せる。レゴブロックみたいで面白いですねぇ。
話を紙のお香に戻しまして
紙のお香です。いまだにパピエダルメニイって打てません…。
台紙からちぎって適当な耐熱容器の上で燃やすんですが、ススがけっこう残ります。火が消えた後にティッシュとかでこするんですが取れません。これは激落ちくんを使うと簡単に取れます。
わが家では無印のお香立てを使っていて、つるつるの陶器製なので、お掃除は簡単でした。
よく燃えるし匂いもモワッと広がる
紙なのでよく燃えます。そして軽いので風がある場所ではちょっと危ないです。燃えた紙片が飛んでいきそうで。
説明書きには「ゆっくり燃やせ」とありますが、火がつくとジリジリジリ…と広がっていって、意外とすぐに終わっちゃいます。その時に煙がちょっと多めに出て、そこにニオイ成分が入ってるみたいです。鎮火してからワンテンポ遅れて匂いがモワッとやってきます。
うちでは焼き魚をやった後によく使っていたので、あの匂いを嗅ぐと焼き魚を思い出すようになりました。魚の臭いはバニラで上書きされてた気がします。
棒状のお香と比べて意外と安かった
パピエダルメニイはだいたい500円前後で売ってます。ちぎると32枚なので32回使えます。なんとなく高くて希少な気がして(売ってる店少ないし)ケチって使ってたんですが、無印のページでお香を見てみたら棒タイプは15本で400円なんですね。香りが一瞬で広がって消える…という燃え方はコーンタイプと似てるんですが、そっちだと6個で350円でした。
フレグランス | 無印良品ネットストア
そう考えるとパピエダルメニイが安く感じてくるので、無印のお香やめてパピ…を2冊買ってこようかなぁ、と思ったりしました。